歯科医院の開業に必要な【事業計画書】のイロハ
2023年4月13日
歯科医院の開業には、医院の賃料や設備費、人件費など多額の資金が必要です。
一般的には銀行や日本政策金融公庫などから融資を受けることとなりますが、
その際に必要になるのが事業計画書です。開業準備で忙しいからと、事業計画書をおざなりにしてしまった結果、
金融機関の審査に時間がかかったり、希望の融資が受けられなかったり、最悪の場合審査に通らないケースも出てくるのです。
事業計画は開業時以外にも、分院を増やす際の追加融資を受ける際や、経営の見直しの際にも必要になってくる重要な書類です。
そこで今回は、事業計画書の書き方とコツを確認していきましょう。
重要なのは開業予定地と初期費用
事業計画書は、開業予定地や従業員数などの計画概要と、初期費用や運転資金などの費用、開業までのスケジュールの3つで主に構成されています。
計画概要では、開業予定地はそのエリアにおける外来患者数を割り出す“診療圏分析”の基準となるため、
金融機関での審査では特に重視されています。たとえば、小児歯科に重点を置くのであればファミリー層の多い新興住宅地を、
ビジネスパーソンの会社帰りをターゲットとするのであれば利便性の高い駅前を予定地にするなどして、
医院の方針とニーズが合致した場所を選択しましょう。
また、費用の面ではまず初期費用を計算しておく必要があります。
歯科医院の開業では、賃料や契約料などの物件費用のほか、人件費や医療機器などの設備費、
ホームページなどの広告宣伝費や求人費、医院の内外装工事費などが必要になる場合もあるでしょう。
開業にかかる金額を計算することで、金融機関からどのくらいの借入をすればよいのかのおおよその金額が見えてきます。
開業する場所や購入する機材によっても異なりますが、
一般的に歯科医院の開業には5,000-7,000万円ほどの資金が必要だといわれています。
費用計算時には、この初期費用にどの程度自己資金を投じることができるのかも割り出しておきましょう。
最終的な金利や返済期間は、さまざまな条件から決定されますが、
自己資金が多いほど返済能力が高いと判断されるため、金融機関からの融資は受けやすくなります。
もちろん、自己資金が少ないからといって融資を諦める必要はありません。
しかし、歯科医院の開業には初期費用の20%ほどは自己資金からまかなうのが一般的といわれています。
もし、初期費用の見積もりが5,000万円なのであれば、1,000万円ほどの自己資金は用意しておくとよいでしょう。
事業の見通しは現実的かどうかを吟味して
開業するにあたって検討すべき項目の中でも重要なのが、運営が軌道に乗るまでの運転資金と、事業の見通しです。
たとえば、保険診療では患者の自己負担は多くの場合医療費の3割となり、
残りの7割が国民健康保険連合会や社会保険支払基金から振り込まれるのは2ヶ月後です。
つまり、開業してまず2ヶ月は、自由診療分と保険診療の3割分のみしか現金収入が得られないのです。
そのため、当座の運転資金を確保しておかなくてはいけません。
事業の見通しでは、まず売上高や売上原価、経費などの見積もりを行なって、
概算で利益を割り出します。このときに重要なのが、現実的ではない希望で見通しを立ててはいけないということです。
患者が定着しなかったり、自由診療の割合が低かったりするケースはよくあることと考え、
計画時には最悪のケースも想定しておくことが大切です。
文部科学省の学校保健統計によれば、虫歯に関しては昭和40-50年代をピークとしてその後は減少傾向が続いており、
平成30年には中学・高校で過去最低となるなど、歯科医院に訪れる患者そのものが減少傾向にあります。
事業計画では、このような経営にとってマイナスになる要因も踏まえた上での見通しや計画を提示し、
それを支える資金計画を作成する必要があるのです。
一方で、金融機関の査定においては悲観的すぎる計画も良いとは言えません。
上の例を考えるのであれば、従来行われていた虫歯治療中心の医療から、
そもそも虫歯にならないようにケアをする予防治療へ比重を移すといった計画を示せば、
事業の将来性を示すことができる可能性があります。現実に即した見通しを立てつつも、
将来性をしっかりと示すことがポイントです。
計画概要や費用を記入したら、あとは開業までのスケジュールを立てていきます。
工事や機材の搬入などで時間がかかる可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
事業計画書は、ある程度の時間がかかったとしても完成度の高いものにしなければなりません。
もし、時間や作成に不安がある場合には、
歯科医院の開業を得意とする税理士や、歯科医療機材業者へ作成を依頼するといった方法もあります。
専門家が作成した事業計画書は融資が通りやすくなるなどのメリットもあるため、
開業時の選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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