建設業の働き方改革『著しく短い工期の禁止』とは?

建設業の働き方改革『著しく短い工期の禁止』とは?

2021年11月18日

建設業界ではこれまで工期を優先するあまりに、
現場の労働者に長時間労働を強いてきたケースが多くありました。

そのため、働き方改革の1部として2020年10月、改正建設業法に“著しく短い工期の禁止”が盛り込まれました。
今回は、この著しく短い工期の判断基準や違反時のペナルティについてご説明します。

 

著しく短い期間の工期にはペナルティを

 

改正された建設業法の第19条の5には『注文者は、その注文した建設工事を施工するために
通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない』と定められています。

工期を設定する上でそれが適切か否かは、
その工事の許可した国土交通大臣や都道府県知事などの許可行政庁が判断をします。
そこで工期が短いと判断された場合は、建設業者ではなく工事の発注者・依頼者が勧告を受けることとなります。

また、工期が適切かを判断するために資料提出を求められることもあり、
これにも従わなくてはなりません。発注者がこれらに従わない場合には、その事実が公表されてしまいます。

 

工期決定の際に考慮することとは

 

工期が適切かどうかを決めるには様々な判断基準が設けられています。
過去同等の工事にかかった期間や建設業者の見積もり内容もその1つですが、
中央建設業審議会が作成した『工期に関する基準』が大切になってきます。

 

この基準には大きく分けて
①工期全般にわたって考慮すべき事項
②工程別に考慮すべき事項
③分野別に考慮すべき事項の3つがあります。

 

  • 工期全般にわたって考慮すべき事項として挙がっているのは以下の10項目です。

(1)自然要因(降雨日・降雪日や寒冷地の冬季休止期間など)

(2)休日・法定外労働時間(週休2日の確保など)

(3)イベント(年末年始、夏季休暇、GWのほか、生息動物への配慮、騒音規制など)

(4)制約条件(鉄道近接、航空制限、スクールゾーンにおける搬出入時間の制限など)

(5)契約方式(設計段階の受注者による工期設定への関与、発注方式など)

(6)関係者との調整(工事の前に実施する計画の説明会など)

(7)行政への申請(新技術や特許公報の許可が下りるまでの時間など)

(8)労働・安全衛生(労働者の安全を確保するための十分な工期の設定など)

(9)工期変更(当初契約時の工期では困難な場合、適切に全体を調整する)

(10)その他

 

たとえば、(1)の自然要因を例とすると、雪の多い北海道では冬季と夏季のスケジュールを
同じにして工事を行うのは難しいと考えられるため、冬季には余裕をもって工期設定が必要になります。
また、(7)の行政の申請は、道路使用許可申請などの申請から
実際に許可がおりるまでの時間を考慮すべき事項だとしています。
工事を行うには多くの要因をクリアしてく必要があるため、これらの条件を考慮して工期は決定されなくてはなりません。

②工程別に考慮すべき事項では、準備・施工・後片付けの各工程段階において考慮すべき事項が、

③分野別に考慮すべき事項では住宅不動産・鉄道・電力・ガスの4つの分野に分け、
それぞれで考慮すべき事項が記載されています。

 

新型コロナウイルスの影響とこれから

 

『工期に関する基準』では、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた工期の設定も求めています。
現状建設現場では、密を回避するために行う入室制限や作業員の減少などによって
通常よりも工期がかかる可能性が高くなります。
そのため、はじめから感染対策を考慮した工期を設定する必要があると同時に、
感染者の状況等によって工事中に適切な工期を確保できないとわかった場合には
発注者と協議を行い工期の延長も行っていかなくてはなりません。

適切な工期で工事を行うことは現場で実際に働いている労働者を守ることに繋がります。
また、長時間労働のイメージが強い業界は新規採用も厳しくなるため、
工期をきちんと設定することは将来的な業界の担い手を確保することにもなります。

業界全体の将来のためにも、『工期に関する基準』を参考にして著しく短い工期ではなく、
適切な工期を設定していきましょう。

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