業界の救世主になるか!?「多能工」の育成方法

業界の救世主になるか!?「多能工」の育成方法

2021年9月9日

建設業界では慢性的な人材不足が続いています。
そこで注目されているのが「多能工」とよばれる、複数の作業を1人で遂行する能力がある人材です。
今回は、業界の人材不足解消の可能性をもつ「多能工」について、具体例も交えながら紹介します。

 複数の工程を一人でこなせる多能工

建設業界では若手人材を確保できていないと同時に、離職率が高いことも人材不足の原因にあげられます。

そこで人材不足解消の手段として、複数の異なる作業や工程を遂行するスキルを持った
「多能工」の育成に力を入れるようになりました。多能工は、従来はそれぞれ専門の業者や
技能者が工程ごとに担当していたものを1人で担当するため、
工期短縮・コスト削減・効率化・品質のばらつきがなくなる
などのメリットがあり、生産性向上や収益率のアップが期待できます。

それでは、多能工自身のメリットはどこにあるでしょうか?
1人で工事一式を引き受けられたり、他者が作業する際の待機時間がなくなるので、
効率的に働いて休みを確保し、なおかつ収入を増やすことができます。
また、企業に所属して働くときもさまざまな案件に対応できる人材として活躍でき、
資格に応じた給与や地位の向上なども望めます。

多能工の育成方法と活用事例

多能工の育成は、研修やOJTなどで行います。
多能工を育成するコースを備えた学校もあり、希望に合わせてやり方を選ぶ必要があります。

では、国内企業の具体的な多能工活用事例として、工藤建設株式会社のケースを紹介します。

(国土交通省公表『マルチクラフターの育成・活用事例集』より)

工藤建設(株)では、各技能について専門工の7~8割の実力を目指すというレベル設定をし、
多能工を育成しています。ただ、職人が得意な工種については自由に追求させることで、
専門工と同程度まで技能レベルが上がった多能工もいるということです。

技能としては「測量(遣り方・丁張り・墨出し)」「土工事(根切り・掘削)」
「鉄筋組立工事」「型枠工事」「コンクリート工事(打設・押さえ)」「作業足場の組立て・解体」を
習得させており、注文住宅の基礎・地下室工事や、マンションの躯体工事に限定して、
多能工を活用しています。
山留めや残土処理、鉄筋加工などは外注しており、
担う業務を明確にしていることが一つの大きなポイントです。

育成にあたっては、富士教育訓練センターなどの外部訓練施設での社会人研修を利用し、
技能部分はOJTにより、実践的な教育を行っています。
作業は必ずベテラン・若手の2人組の指導体制とし、
施工サイクルの安定した住宅の基礎工事を年間4~5現場経験することで、
効率よく仕事を覚えることができているようです。

こうした取り組みの結果、同社では、専門工による施工で実働38~40日のところ、
自社多能工による施工では30日と、工期の20%減を達成しました。

専門工を多能工に再教育する場合、まずは工程において隣接している技能を覚えてもらうことで、
知っている・できる範囲を増やし、ゆくゆくは多能工として活躍してもらう、という方法もあります。

まずは自社の請け負っている業務を確認し、多能工化について検討してみましょう。

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