相続・遺贈をスムーズに!「遺言執行者」を選んでおきたい理由
2020年12月1日
現在住んでいる自宅を自分の死後、どのようにするか考えたことはありますか?
子供や孫が遠方に住んでいたり、すでに住宅を購入している場合は相続することも難しいかもしれません。
その場合の選択肢として「遺贈」という形があります。
これは、遺言を残して法定相続人以外の人にも遺産を託せるものですが、
遺贈を選ぶ場合は遺言執行者をたてておくとその後の登記手続きの手間が軽くなります。
今回は遺贈と遺言執行者についてご説明します。
いるといないで大違い。選んでおきたい「遺言執行者」
遺言執行者(遺言執行人)とは、遺言の内容を実行する人のことです。
財産目録の作成や相続財産となっている預貯金の請求、解約手続き、不動産の登記手続き…
相続・遺贈に関してはたくさんの作業が発生しますが、遺言執行者がいることで手続きがスムーズに進む場合が多くあります。
その他、遺言執行人は民法で
「遺言執行者は遺言の内容を実現するため、
相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」
「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」とされており、
非常に大きな権限を持ちます。
その為、遺言の内容を不服とした人が勝手に財産を処分してしまうなどの
トラブルが発生しても遺言執行者はその手続きを無効にし、遺言に従った相続を推し進めることができるのです。
また特に、第三者に遺贈されているものが「不動産」である場合は、
遺言執行者の有無が相続手続を難航させないために重要な役割を果たすことが多く、
登記手続きの手間も大きく変わります。
通常、贈与に基づく所有権移転登記は
・原則として「登記権利者」(贈与を受けた人)と「登記義務者」(贈与をした人)
による共同申請で行います。
しかし、遺贈の場合は、登記義務者(贈与をした人)の代わりに遺言執行者が登記義務者となります。
その場合、登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。
- 遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所で検認済のもの)
- 登記済権利証または登記識別情報通知書
- 遺言執行者選任の審判書(家庭裁判所が遺言執行者を選任した場合)
- 遺言執行者の印鑑証明書
- 受遺者の住民票または戸籍の附票
- 固定資産評価証明書または納税通知書
- 遺言者の戸籍謄本または除籍謄本
- 遺言者の住民票除票または戸籍の附票
同様のケースで遺言執行者が定められていない場合、
相続人全員が登記義務者となり、登記権利者と共同申請をすることになります。
このケースでの登記手続きでは、先ほどあげた書類に加えて、以下の書類が必要となります。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書を揃えるのはなかなか大変な作業ですし、
相続人の数によっては非常に煩雑な作業になります。
遺言執行者の決め方
【遺言で残す場合】
・遺言執行者を具体的に選びその人を「遺言執行者」として指定する
・「遺言執行人を選任する人」を決め、遺言者が亡くなった後に指定された人が遺言執行者を選任する
【遺言で残されなかった場合】
・家庭裁判所が選任する
という方法があります。この場合は家庭裁判所に申し立てができるのは
相続人と受贈者(遺贈を受ける人)などの利害関係人となります。
遺産の相続に関しては様々な手続きがあったり、トラブルが起こる可能性もあります。
遺言執行者をあらかじめ選任しておけば、
相続・遺贈手続きをスムーズに進められることが多いため安心です。
(ただし、遺言執行者として指定された人はこれを拒否することもできますので、
遺言執行者を選任するときは、あらかじめ承諾を得ておくようにしましょう)
最後に、遺言執行者が遺贈の履行ができるといっても、
円満に相続や遺贈の手続きを進められないと相続人や受遺者の負担は大きくなってしまいます。
禍根が残らないよう生前に遺贈の意思を相続人に伝え、できる限りの承諾を得ておけると良いですね。
遺贈を検討する際は遺言執行者をたてるとともに、相続人への配慮も忘れないようにしましょう。
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